森岡正博『人生相談を哲学する』を読んだ感想

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この本との出会い

私の子ども達が読んでいる毎日小学生新聞に「てつがくカフェ」というコーナーがあります。

「哲学カフェ」とは、暮らしのなかにある身近な問いを題材に哲学対話を行うことで考えを深めていく試みです。
1992年、哲学者マルク・ソーテによってパリで開かれたのが発祥とのこと。
街の人々が喫茶を楽しみながら議論するそのスタイルはやがて日本にも広まり、小・中学校の授業にも取り入れられ、教育機関からの注目も高まっているそうです。

この連載がとっても面白くて、私も毎回楽しみにしています。

この連載の筆者の1人である河野哲也さん(立教大教授)が初心者に薦める哲学の本という記事が毎日新聞にありました。

哲学はとっつきにくいイメージがありますが、初心者にも親しめる本を13冊も紹介してくれていました。

この本はその中の1冊です。

哲学の本といえば、20代の頃に読んだ「ソフィーの世界」を思い出します。

「ソフィーの世界」以来の哲学の本、ワクワクしながら読み進めました。

どんな本?

著者の森岡正博さんは現在は早稲田大学人間科学部教授で、哲学、倫理学、生命学を中心に、学術書からエッセイまで幅広い執筆活動を行っています。

2008年から数年間、朝日新聞の文化面で「人生相談」の連載を担当していたそうです。

新聞連載が終わったあと、本として出版するために、ご自分の回答を見直していて、

「そもそも人生相談とはいったい何なのか?」という根本問題にぶつかったそうです。さっそく哲学って感じですね。

哲学者が行うべき人生相談は、投げかけられた質問について相談者と一緒になって「ああでもない、こうでもない」と悩み、いろんな角度から考察を深め、新たな思索を発見していくはずだと筆者は言います。

相談者にも輪に加わってもらうことはもうできないので、

この本では相談者からの相談のエッセンスを筆者自身の言葉で新たに書き直し、

それをめぐって思索を広げていくというスタイルを取っています。

まず、相談に対して新聞に掲載された筆者の回答がそのまま紹介されます。

さらに、「ふたたびあなたへ」と題する新しい回答がていねいに書かれています。

相談者は10代から20代の若者たちですが、人生を長く経験した熟練の読者も楽しめます!

心に残った言葉

死の淵にあってなお輝くもの

周りからの適切なサポートと、十分な時間と、安全な環境と幸運があれば、人はどのような絶望の時間をもくぐり抜けていくことができると私は考えます。そしてそれらに恵まれず、たとえみずから命を絶つとしても、そのときまで生きてこれたことは誇ってよいし、根源的な希望は、小さな光の結晶のように、最後の瞬間まで輝き続けていたのです。

森岡正博『人生相談を哲学する』

自分が絶望のときに、この言葉を思い出せるかは分かりませんが

私の大切な人が絶望に落ち込んでいるときに、適切なサポートと、十分な時間と、安全な環境を提供できる人でありたいです。

相手を犠牲にしない「自己主張」

上手な自己主張とは、相手の意見をブルトーザーのように押しのけて自分を主張していくことではなくて、相手の意見をよく受け止めて理解しながら、相手を包み込むようにして自分の意見を浸透させていくことなのです。

森岡正博『人生相談を哲学する』

なるほど、その通りだと思います。

ブルトーザーのような人、見かけたことあります。

ただ、実際に上手に自己主張できるようになるには訓練が必要だなと思います。

筆者はこの上手な自己主張をする感覚を育てていくには「哲学対話」を経験してみるのがいいと言っています。

私も機会があれば「哲学カフェ」に参加してみたい気分になりました。

死期の近い老人も夢を見る

そして、おそらく、死が間近に迫ってきて最後に会いたいと彼らが夢見るのは、子どもであるあなたでしょう。あなたに会いたいという夢が、彼らの心を占めるでしょう。きっと仕事や他の予定でたいへんかもしれませんが、あなたに会いたいという彼らの夢を、十分に時間を取って実現してあげてください。あなたがかなえてあげられる最後の夢は、彼らが心の底に秘めているところの、あなたに会ってその手をずっと握りしめていたいという夢なのですから。

森岡正博『人生相談を哲学する』

私の両親は県外に住んでいるので、すぐには会いに行くことはできません。

今はまだ2人とも元気にしていますが、この先いつかお別れする日は必ず来ます。

それまでにあと何回会うことができるんだろうかって思うと寂しくなることがあります。

会えるうちにたくさん会っておきたいと強く思いました。

感想

とても読みやすくて、あっという間に読んでしまいました。

私はもともと新聞や雑誌の「人生相談」のコーナーが好きなので、楽しく読むことができました。

「人生を良く生きるとはどういうことか?」「生きる意味とは何か?」

哲学って難しいイメージがありますが、この本では哲学を身近に感じることができます。

哲学とは自分の普段の行動や常識を問い直すこと。

これを機会に他の哲学の本も読んで、哲学についてもっと知りたいです。

巻末には筆者が選んだ『悩んだとき、「哲学」したいとき出会いたい本&映画』も載っています。

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